まちの賑わい、明日へつなぐ。
更新日:2023年2月28日
昭和40年代以降、宅地開発により人口が急増した名張市。
今後、高齢化や人口減少が進む中、地域の担い手が減少し、空き家が増えていく見込みです。
まちの賑わいを失ってしまわないように、今、何ができるのか。
人とつながりながら、地域活性化に取り組んでいる皆さんをご紹介します。
名張のまちなかにあるテレワーク施設「FLAT BASE(フラットベース)」。築100年を超える元町の空き家を改装し、テレワーク施設兼貸しスペースとして活用されていいます。都市部からの人の流れを作ることなどを目的に、市の事業の一環として整備されました。
「“ふらっと”人が集まって、想いと縁がつながる場所。アットホームさが自慢です」と、管理者の北森仁美さんは話します。イベントや教室、打合せなど、用途を限定しない貸しスペースとしても活用され、3月のオープン以来、さまざまな人の出会いを生んでいます。
7月のある日、兵庫県在住の新婚夫婦がやってきました。
曽爾高原で結婚記念の撮影をするための‶着替えスペース”として使用するというのです。
「事前に相談があり、想定外の利用で驚きましたが、できる限りのことはしたい」。そう考えた北森さんは、布を縫い合わせて着替えスペースを作ったり、近所の床屋から大きな鏡を借りてきたり…。
「とても喜んでくれて、今度ゆっくりと名張を訪れたいと言ってくれました。少しずつですが、こうした縁を積み重ねていきたい」と北森さん。
実は、この施設は以前、北森さんの義母が住んでいて、「この家が賑やかになっていくこともうれしい」と笑顔をみせてくれました。
法人名には「まちと建物、人を未来へつなぎたい」という思いが込められています。空き家を地域に開かれた場にしたいと考えていた北森さんと出会い、共同で「フラットベース」を整備しました。
「人口が減っていく分、人と人がもっとつながっていく必要があるのでは。誰かに出会って、新しいことが始まる。そんなことがこの場所で起こりつつあります」と野山さん。空き家だった施設がいま、まちの賑わい創出に向けて、新たな道を歩み出しました。
空き家を改修したテレワーク施設「FLAT BASE(フラットベース)」(元町)には、地域の内外から人が集い、さまざまな想いと縁をつないでいます。
FLAT BASEの管理人の野山直人さん(左)と北森仁美さん(右)
野球やサッカーなど趣味があう人が集まったり、「三重にもう一つ帰りたい場所ができた」と言ってくれる利用者がいたり…。ここは、まるで「大人の秘密基地」のよう。貸しスペースは、用途を限定していませんが、できる限り人との出会いを大切にしていただいています。
花火大会の日に地域で盛り上がれる企画はないかと、スタッフ同士で頭を悩ませていたら、「子どもたちの居場所をつくりたい」という男性が本当に「ふらっと」やってきたんです。これって運命やんって!「まちのために何かしたい」と思う人がいれば、それを実現できる場所や人のつながりがあることが大切ですよね。
人口減少が課題となっていますが、本当の課題は、人口減少社会でも幸せに暮らす方法に向き合うことなのかもしれません。ここを拠点に、いろんな人がつながって、わいわい楽しく暮らせる居心地のいいまちにしていきたいです。
「フラットベース」を管理する北森さんと野山さんは、実は、旧市街地に住んでいるわけではありません。「名張は、住宅地や村落部、旧市街地といろんな顔があって、自分の関心に合った活動の場を選べるところ」と北森さん。「地域の人が集える場があり、外からも気軽に人がやってくる。そうやって、まちの中にいろんな人が馴染んでいけばいいですよね」と野山さん。
オープンから半年が経過した「フラットベース」。9人のスタッフとともに、「関係人口」を紡ぎながら、まちに変化をもたらし始めています。
地域活力創生室 伊奈 眞由美
名張市の人口は平成12年をピークに、平成13年以降、転出者数が転入者数を上回る「転出超過」が続き、令和27年には6万人を下回ると予測されています。
市では、令和2年に、第2期目となる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しました。人口減少を食い止めるため、働く場の確保や、都市部からの人の流れをつくること、結婚・出産・子育ての希望をかなえることなどを基本目標として、さまざまな取組を推進しています。
空き家や耕作放棄地の活用など地域の課題解決に向けて、若者の力が発揮されています。
赤目地域にある空き家で学習教室を開いた大学生がいます。「授業料が高かったり、通えなかったりして塾に行けない子もいる。自分にできることを生かして、地域の役に立てればうれしいですよね」と話すのは、三重大学2年生の冨森一汰さん。現在は、友人2人とともに、10人の地元の中学生を安価な授業料で教えています。
空き家を借りたのは、地元の青年会メンバーが立ち上げた一般社団法人「滝川Y O R I A I(よりあい)」でした。賃料の代わりに建物の維持管理を行って、大学生に活用してもらっています。「空き家を譲った後に、近所に迷惑がかからないか心配している人が多い」と代表理事の重森洋志さん。「『祖父母の代から顔なじみ』の信頼関係がある強みで、空き家の活用を円滑に進めていくことができています」と話します。
「滝川Y O R I A I」は、閉鎖寸前だった赤目四十八滝キャンプ場の運営を皮切りに、地域資源の掘り起こし、空き家や耕作放棄地の活用、集客イベントの開催など、地域課題解決に向けた取組を進めています。
赤目まちづくり委員会会長の藤村純子さんは、「地域の活動は、何をするにも若者を巻き込んでいきたいと考えています。地域の担い手が減っていく中、若者の感性を取り入れて、これまで『当たり前』だった行事を変えていく必要がある」と訴えます。現在は、「滝川Y O R I A I」をはじめ、青年会や消防団、P T Aなどに所属する若者自身が赤目まちづくり委員会の役員となり、地域の防災や青少年育成、賑わいづくりなどに積極的に関わっています。
大学生が地域の課題や魅力を探る「YORIAIプロジェクト」。現地案内や聞き取りなどに地域の皆さんが全面協力。大学生は空き家の多さに驚き、その活用も提案しました。
「子どもたちの居場所になれば」と、小学校近くの空き家をたこ焼き屋として活用しています。
地域で広場を整備。若者たちもイベントなどに積極的に活用し、地域を盛り上げています。
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(一社)滝川YORIAI 重森 洋志 さん
空き家を学習教室やたこ焼き屋として活用していると、「この空き家も使ってくれへんか」という声をいただくように。空き家を維持管理するだけでなく、地域が賑わい、ビジネスにも結び付くような活用方法を所有者とともに考えます。こうした地域活性化に向けた取組を積み重ね、子どもたちにとって、将来の可能性を見出せる地域を築いていきたいですね。
でも、地域の中で「あいつら勝手なことやって」となれば、円滑に事が進まなくなってしまいます。地域一丸となって私たちの活動を応援いただいているからこそ、いろんな事業にチャレンジできる。また、若者同士の横の連携があることも大きな力となっています。
他地域の人に「若者の参画を進めるには?」と聞かれますが、平日昼間に会議が行われていたりすることも…。従来の慣習を一つひとつ見直していく必要があるのではないでしょうか。
元小学校PTA会長 冨森 康宏 さん
PTA会長、小学校長、区長などが「青少年育成部会」を構成しているので、何をするにも調整がしやすい!顔の見える関係だから「無理のない程度で」と気軽に助け合えるのもいいところですね。赤目地域では独自に、PTA役員経験者による「PTA運営評議会」を5年前に設立し、現役役員とともに活動しているので、地域との連携もうまく引き継いでいけるし、若者同士の新たなつながりも生まれていますよ。
消防団 赤目分団 濱地 俊宏 さん
子どもやお年寄り、車いすの人など、それぞれの視点で防災を考えておくことが大切です。地域ぐるみの防災訓練は重要な機会なので、消防団もしっかりサポートします。また、地域の催しに消防団が参加したり、消防団OBに支援いただいたりと、地域のつながりを大切にしながら、災害時に迅速な対応ができる体制を築いています。今後も、自助と共助で「みんなで助かるまちづくり」を進めていきます。
赤目まちづくり委員会 会長 藤村 純子 さん
まちづくりの担い手不足はじわじわとやってきます。高齢者などの生活支援組織「あんしんねっと赤目」でも、利用者が増える一方、ボランティア会員数は横ばいのままです。そうした中、赤目まちづくり委員会前会長の「若者や女性が積極的にまちづくりへ参画できる体制づくりを」といった考えを引き継ぎました。
コロナで中止になりましたが、夏祭りの運営を若い人たちに任せたところ、高校生がポスターを作ったり、子どもが盆踊りに参加できるようにしたりと新しい試みも企画されました。「今まではこうだったから」と頭ごなしに否定せずに、シニアの側から、しっかりと聞く耳を持つことが大切。若い人たちのチャレンジを温かい目で見守っていきたいですよね。
もちろん、従来の事業を180度変えてしまおうとしているのではありません。いろんな世代の人の発想を生かして、失敗も繰り返しながら、少しでもいい方向にまちづくりを継続していければと思うのです。
地域経営室 室長 中木屋 恵理子
高齢化が進む名張市では、これまで主に地域の活動を担ってきた60~70歳前後の「支える世代」が減少。75歳以上の「支えられる世代」が増えていき、地域の事業や役員選考のあり方など、従来通りではうまくいかない地域が出てくることも考えられます。
市では、地域間の情報共有を図ったり、市の現状や先進事例などを知ってもらうシンポジウムや研修などを開催したりしています。
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つつじが丘では、子どものうちからまちづくりに参加する機会を設けています。
「あいさつが飛び交うまちにしよう」と、子どもたちが地域を練り歩いたり、あいさつを呼びかけるティッシュを配ったり、まちじゅうに看板を立てたり…。大内さんは、「地域のためにと、子どもたちからいろいろ提案してくれます。できるだけ、一緒に実現させていきたいですよね」と嬉しそう。
あいさつ運動をはじめ、地元のイベント企画や、ご当地キャラ「えみらる」の制作、子どもたちの考えた標語入りの交通安全看板の設置など、話し合われた内容が一つずつ実現されています。そんな様子を見て、会議設立時に中学生2人だった参加者が、現在では約50人にまで増えています。
つつじが丘では、独自に空き家や空き地の把握に努めていて、昨年は、近大高専の学生とともに空き家のアンケート調査を実施。子どもが進学や就職でつつじが丘を離れる家庭が多い中、空き家になった際の対応を決めていない人が多いことが分かりました。さらに、95%が「身内がUターン移住する予定がない」と回答。事態の深刻さが浮き彫りとなりました。
「子どものころからまちと関わりを持って、社会に出ても継続して関わり続ける。そんな流れが生まれてくればいいですよね。『つつじっ子会議』のメンバーと接していると、もうすでに『地域の一員』という気持ちをもってくれているように感じます」と大内さん。
市内の高校に通う生徒で「将来的に名張市に住みたい」とした人は41%(市外在住除く)。その3分の2が「地域との関わりがある」というデータもあります。「つつじっ子会議」の取組は、まちの未来を大きく変えていくきっかけになるかもしれません。
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※つつじっ子会議の活動や近大高専の学生による研究をもとに作成しました
つつじっ子会議メンバー(南中学校3年生)
平野 結士 さん
会議のメンバーで考えたご当地キャラ「えみらる」が、イベントや看板、お弁当など地域のいろんなところで活用されるようになってきて、うれしいし、なんだか達成感があります。
中学校を卒業すると、会議を抜けることになりますが、地域の大人とも顔なじみになれたので、今後も「子どもフェスタ」など地域の行事に関わっていきたいですね。つつじが丘は、人が温かくて、すごく居心地のいいところ。できれば、ずっと住み続けたいなって思っています。
つつじっ子会議メンバー(南中学校3年生)
森本 未來 さん
会議に参加するまでは、地域の人と接することもなかったけれど、今では、いろんな人に大きな声であいさつできるように。すると、笑顔でいろいろ話しかけてくれるようになって、それがなんだかうれしいなって思います。
それに、会議に出てる地域の皆さんをみていると「つつじが丘が好きなんやな」ってすごく伝わってくる。現在は、大好きなつつじが丘のことを多くの人に知ってもらえるようなクイズ企画を練っています。
つつじが丘・春日丘自治協議会 会長 大内 房雄 さん
この夏、自治協議会では、子どもたちの学習の場として集会所を開放。お茶やお菓子を用意したのに、ほとんど利用されなかったんです。なるほど、子どもたちに利用方法を考えてもらった方がよかったなと。子どもを地域の一員と捉え、一緒に考えることが大切だと改めて思い知らされましたね。
「つつじっ子会議」は、そんな子どもたちの声を聞ける大切な場。真剣に耳を傾け、どうすれば実現できるのか、また、実現が難しければ、なぜ難しいのかをきちんと伝えます。ある日、子どもたちが「溝にごみが詰まっているよ」と市民センターへ知らせてくれて、一緒に掃除したこともあります。地域の困りごとを自分事と捉えてくれたことがすごく嬉しかったですよね。
空き家の問題は、深刻に受け取っていて、定期的な調査を実施しているほか、近大高専の学生による調査結果を地域の広報紙でも連載。一人ひとりに危機感を持ってもらうことからはじめていこうと考えています。
これからも、子どもや女性、若者を巻き込みながら、空き家問題を含むさまざまな地域課題に取組み、子どもたちが大人になったとき、つつじが丘に住みたいな、戻りたいなと思えるような、賑わいあふれるまちであり続けたいと思います。
営繕住宅室 室長 浪花 武志
適正に管理されていない空き家は景観を損ねるだけでなく、害獣の生息や放火、不法投棄、建物部材の落下などの問題を引き起こします。
名張市の住宅総数の実に7分の1が空き家という状況の中、市では、「空き家バンク」による空き家売買のサポート(8月末現在の登録件数…251件、成約件数…176件)や、移住者向け中古住宅改修に対する補助、危険な空き家の除却補助などの取組を進めています。
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近畿大学工業高等専門学校
教授 立神 靖久 さん
空き家は個人の財産ですので、他人が勝手に手入れできません。だからと言って放置するのではなく、まずは、現状を把握し、地域内で共有することが大切です。そして、自分の家が空き家になった際の対応を考えておく意識を高めていくなど、地域ぐるみで取り組んでいく必要があります。
特にニュータウンの空き家は、都会の移住者が望む田舎ならではの景観や畑などの付加価値がある物件が少なく、根本的には人を流出させない取組が求められます。地域の協力を得て、つつじが丘の空き家の状況や互助の取組を調査・研究した本校の学生もまた、「子どものころからまちづくりに関わり、将来的にここで子育てをしたいと思える循環をつくること」の必要性を訴えています。
へっぽこラジオ体操
左から 中 基紀さん、山下 哲平さん、岩本 和磨さん
同級生の3人が、毎朝、朝日公園などでラジオ体操を始めた!
SNSで参加者を募る彼らは「思いきって行動に移せば、いろんな人とつながっていける」と意気込んでいます。8月の「24時間体操チャレンジ」には、のべ90人が参加。こうした一つひとつの取組がまちに活力をもたらしています。
美山 莉香さん
▼デザイン会社経営。スキルを生かして名張の魅力をHPなどで発信中
都会にあこがれて、名張を出ていった時期もありましたが、帰郷して子どもが生まれたときに気付いたんです。安心・安全な野菜や食品が、名張だとこんなに手に入るんだって。これを広く伝えていこうと、地元農産物や農家さんの魅力を発信するウェブサイト「nanowa(なのわ)」の運営に携わり、もう5年が経ちます。
名張と言えばこれ」という特徴はないかもしれませんが、豊かな自然においしい食べ物、万葉の歴史…、実はたくさんの魅力があって、新しい発見を楽しめるまち。今では、女性の在宅ワーク支援の一環で、2人のママさんと一緒にイベントやグルメ、お出かけスポットなど幅広い情報を「nanowa」を通じて発信しています。
市内外の人に名張の「素敵」をたくさんみつけてもらって、名張っておもしろそう、住んでみたい、住んでよかったという人が増えていくといいなと思います。
佐山 天晟(たかせ)さん、小澤 寧々さん
▼伊賀地域の学生手作りのイベントを発案・実行した高校生
学校行事がコロナで次々と中止に…。自分たちの青春は自分たちで作ればいい。そんな思いで、昨年の秋ごろからLINEを使って仲間を募っているうちに、友達が友達を呼び、中学生から大学生までなんと50人の実行委員が集まりました。
音楽やダンス、食などが一緒に楽しめるイベントを目指し、仲間たちと試行錯誤。地元の企業にも出店や協賛をしてもらいながら、ひとつずつ自分たちの思いを形にしていきました。こうした中、仲間同士の絆も深まりましたね。
7月に開催のイベントには子どもからお年寄りまで約3,000人の来場者が。オリジナルのテーマソングを披露した後、大空へ放った風船を見上げて歓声を上げるみんなの姿を見ていると、自然と涙が溢れてきました。来年は伊賀市で開催予定。今からもう準備に入っています。さらにレベルアップして地域を盛り上げますよ。
八木 知夏 さん
▼信州大学2年生。育った地域を大切にしたいと、帰省した際などに地域の活動に参加している
忘れられない「百合小子どもクラブ」主催のキャンプ。クラブに関わる地域の大人たちが全力で遊んでくれました。こうした活動を通じて、まちじゅうに知っている大人がいたことは、このまちに住む安心感につながっていたんだと思います。
小学校卒業後も子どもクラブに関わりたくて、地域の皆さんと一緒に活動をサポートする側に。今では30人を超えるクラブ出身者がこの輪に加わっています。地域のいろんな人と関わることで新しい自分が見つけられる。子どもたちにも、そう感じてもらえたらなと思います。
今は百合が丘を離れて暮らしていますが、地域の一員として、私の居場所があると感じます。イベント企画にもオンラインで参加できますし。人と人との関わりの中でこそ、まちの賑わいが生まれていくのではないでしょうか。これからも百合が丘の活動に積極的に関わっていきます。
細川 智之 さん
▼空き店舗で地元産野菜などを販売する「おひさま市場」を開催
かつての桔梗が丘商店街は、人や車が通れないほどの賑わいで、店主とお客さんの交流も盛んでした。地域の人のつながりの中心が商店街だったように思います。今は閉まったままのシャッターが目立ち、行き交う人もまばら。このままではアカン…。そんな気持ちがこみ上げますね。
移動手段がなくて買い物に困っている人のために始めたのが「おひさま市場」です。週に2日、空き店舗で開催。荷物を持ってあげたりしながら、お客さんとコミュニケーションも。「市場ができてよかった」と言ってもらえると励みになります。
月に1度は、他地域のカフェなどにも出店してもらう「マルシェ」を開催。若い人の姿も多く、普段から市場を利用いただいている人も家族を連れて来てくれたりと、皆さんに応援いただいています。商店街に少しずつでも活気を取り戻せるよう、地道に取組を続けていきたいですね。
上高原 由佳 さん
▼2年前に名張へ移住。人のつながりを大切に、農業に親しんでいる
無農薬米を作る92歳の大ベテランに農業を教わろうと、大阪から名張へ移住。農業が軌道に乗ってくる中、今年からは、親子連れなどを対象に田植えや稲刈り体験を始めました。農業のやりがいや食の大切さを感じてもらえたと思います。
余ったトマトの苗をみんなに育ててもらう「トマトチャレンジ」という企画も実施。SNSで募集すると、県内外から25人が参加してくれました。育て方を伝えているうちに会話も弾んで、私自身が一番楽しんでいたかもしれませんね。
全国の人に自慢したくなるおいしいお米に野菜、そして、人の温かさ!もう、このまちにぞっこんです。「自分がいいな」って思ったことを、みんなと共有できれば、新しい輪が広がっていくんですよね。そんな人が少しずつでも増えていけば、まちはもっと賑やかで、楽しくなっていくんじゃないかな。
東海大学 文化社会学部 教授 河井 孝仁 さん
▼地域の持続的発展に向けたシティプロモーション推進を図る「シティプロモーションアワード」を創設するなど、全国的なシティプロモーション研究の第一人者として精力的に活動されています。
近年「シティプロモーション」という言葉を耳にするかと思いますが、その目的は、地域の魅力を発信し、人口増加を目指すことに留まりません。まちに愛着をもって、自分の住む地域を良くしたいと考える人や、住んでいなくても、その地域に関わろうとする人など、「地域に真剣になる力」を地域の内外に広げ、「地域の持続的な発展」につなげていこうというものです。
ところで、「まちへの愛着」はどこからやってくると思いますか。全国の事例からみて明らかなことは、自分のまちを語れる″ようになれば、確実に愛着が生まれるということです。「自分のまちには何もない」と日本中どこに行っても聞きますが、まずは、まちの魅力を語れる人を増やしていくこと。その上で、魅力を発信できる場をたくさんつくっていって、住民自らが共感できる名張「らしさ」を示すブランドメッセージが生まれてくれば、さらに「シティプロモーション」の活動が広がっていくことでしょう。
こうして地域に関わる人々の持続的な「ここに住む(関わる)幸せ」をつくり出す循環ができれば、まちの輝きは失われないはずです。
名張市長 北川 裕之
▼名張市の活力を失わせないよう、「新しい産業が息吹くまち」「若者が定着するまち」「だれもが安心して暮らせるまち」を政策の柱に掲げ、今年4月、第4代名張市長として初当選。現在、まちづくりの基本指針「名張市総合計画」の策定に向けて取り組んでいます。
通勤・通学に不便。働く場所がない。こうした理由で多くの若者が名張市から転出している中、大阪・関西万博をきっかけに、食と観光を基軸とした新たな観光産業を築き、魅力的な働く場を創出していきます。
また、新しい総合計画の策定にあたり、若い人たちと意見交換していると「まちづくりに関わるチャンスがない」といった声も。意欲ある学生や若者がチャレンジできる機会が必要で、例えば、県内の大学生が地域課題の解決に向けて取り組む「三重創生ファンタジスタ」といった制度の活用なども検討しています。
「まちの賑わい」は、商業・観光施設の誘致や一過性のイベントなど、単に人を集めるだけで形成されるものではないはずです。まちに愛着をもった人がつながり、コミュニケーションが活発に行われ、まちの将来に主体的に関わる人を増やしていくことこそが重要なのではないでしょうか。
人と人とのつながりが名張の財産です。今後、皆さんと一緒になって「シティプロモーション」を強化し、転出した人も含め、市内外に地域の協力者を増やしながら、賑わいあふれるまちを目指していきます。
投稿いただいた作品は、市の「シティプロモーション」に活用させていただくことも。「#名張感動」を合言葉に、地元の魅力を周りに伝えて、みんなで名張を盛り上げていきましょう!
「広報なばり」令和4年10月号を再編集して掲載しました(配布の紙面はモノクロです)
※画像をクリックするとPDFが開きます。
今後、高齢化や人口減少が進む中、地域の担い手が減少し、空き家が増えていく見込みです。
まちの賑わいを失ってしまわないように、今、何ができるのか。
人とつながりながら、地域活性化に取り組んでいる皆さんをご紹介します。
- 広報なばり令和4年10月号に掲載の特集記事を再編集しています。
- 冊子「オモローカルつうしん01」(令和5年2月発行)に要約版を収録しています。
名張のまちなかに、「ふらっと」人が集える居場所が誕生
名張のまちなかにあるテレワーク施設「FLAT BASE(フラットベース)」。築100年を超える元町の空き家を改装し、テレワーク施設兼貸しスペースとして活用されていいます。都市部からの人の流れを作ることなどを目的に、市の事業の一環として整備されました。
「“ふらっと”人が集まって、想いと縁がつながる場所。アットホームさが自慢です」と、管理者の北森仁美さんは話します。イベントや教室、打合せなど、用途を限定しない貸しスペースとしても活用され、3月のオープン以来、さまざまな人の出会いを生んでいます。
7月のある日、兵庫県在住の新婚夫婦がやってきました。
曽爾高原で結婚記念の撮影をするための‶着替えスペース”として使用するというのです。
「事前に相談があり、想定外の利用で驚きましたが、できる限りのことはしたい」。そう考えた北森さんは、布を縫い合わせて着替えスペースを作ったり、近所の床屋から大きな鏡を借りてきたり…。
「とても喜んでくれて、今度ゆっくりと名張を訪れたいと言ってくれました。少しずつですが、こうした縁を積み重ねていきたい」と北森さん。
実は、この施設は以前、北森さんの義母が住んでいて、「この家が賑やかになっていくこともうれしい」と笑顔をみせてくれました。
人口が減っていく中、地域の内外に多様なつながりを
「生まれ育った名張で子育てをしたいと思い、Uターンしました。でも、まちに人がいない。空き家が増えている。建築士としての経験を生かしながら、子どものころのような賑やかなまちを取り戻したいと思いました」。そう話すのは、空き家を活用したまちづくりを進める一般社団法人「つなぐ」代表理事の野山直人さん。法人名には「まちと建物、人を未来へつなぎたい」という思いが込められています。空き家を地域に開かれた場にしたいと考えていた北森さんと出会い、共同で「フラットベース」を整備しました。
「人口が減っていく分、人と人がもっとつながっていく必要があるのでは。誰かに出会って、新しいことが始まる。そんなことがこの場所で起こりつつあります」と野山さん。空き家だった施設がいま、まちの賑わい創出に向けて、新たな道を歩み出しました。
想いと縁をつなぐ
空き家を改修したテレワーク施設「FLAT BASE(フラットベース)」(元町)には、地域の内外から人が集い、さまざまな想いと縁をつないでいます。
大人の秘密基地(フラットベース)へようこそ!
FLAT BASEの管理人の野山直人さん(左)と北森仁美さん(右)
野球やサッカーなど趣味があう人が集まったり、「三重にもう一つ帰りたい場所ができた」と言ってくれる利用者がいたり…。ここは、まるで「大人の秘密基地」のよう。貸しスペースは、用途を限定していませんが、できる限り人との出会いを大切にしていただいています。
花火大会の日に地域で盛り上がれる企画はないかと、スタッフ同士で頭を悩ませていたら、「子どもたちの居場所をつくりたい」という男性が本当に「ふらっと」やってきたんです。これって運命やんって!「まちのために何かしたい」と思う人がいれば、それを実現できる場所や人のつながりがあることが大切ですよね。
人口減少が課題となっていますが、本当の課題は、人口減少社会でも幸せに暮らす方法に向き合うことなのかもしれません。ここを拠点に、いろんな人がつながって、わいわい楽しく暮らせる居心地のいいまちにしていきたいです。
まちの賑わい創出のカギを握る まちへの愛着をもつ「関係人口」
まちの賑わい創出に向けて重要なのは、移住者や観光客を増やすことばかりではありません。地域内にルーツがある人や、地域に情熱や想い、愛着をもつ人(関係人口)をいかに巻き込んでいけるかがポイントとなります。「フラットベース」を管理する北森さんと野山さんは、実は、旧市街地に住んでいるわけではありません。「名張は、住宅地や村落部、旧市街地といろんな顔があって、自分の関心に合った活動の場を選べるところ」と北森さん。「地域の人が集える場があり、外からも気軽に人がやってくる。そうやって、まちの中にいろんな人が馴染んでいけばいいですよね」と野山さん。
オープンから半年が経過した「フラットベース」。9人のスタッフとともに、「関係人口」を紡ぎながら、まちに変化をもたらし始めています。
地域課題と市の取組(1)「人口減少」
地域活力創生室 伊奈 眞由美
名張市の人口は平成12年をピークに、平成13年以降、転出者数が転入者数を上回る「転出超過」が続き、令和27年には6万人を下回ると予測されています。
市では、令和2年に、第2期目となる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しました。人口減少を食い止めるため、働く場の確保や、都市部からの人の流れをつくること、結婚・出産・子育ての希望をかなえることなどを基本目標として、さまざまな取組を推進しています。
若者と地域をつなぐ
「何をするにしても若い人を巻き込んでいこう」と、若者(主に子育て世代)の活動を支援している赤目地域。空き家や耕作放棄地の活用など地域の課題解決に向けて、若者の力が発揮されています。
空き家で学習教室を開く!? 地域で叶えた大学生の思い
赤目地域にある空き家で学習教室を開いた大学生がいます。「授業料が高かったり、通えなかったりして塾に行けない子もいる。自分にできることを生かして、地域の役に立てればうれしいですよね」と話すのは、三重大学2年生の冨森一汰さん。現在は、友人2人とともに、10人の地元の中学生を安価な授業料で教えています。
空き家を借りたのは、地元の青年会メンバーが立ち上げた一般社団法人「滝川Y O R I A I(よりあい)」でした。賃料の代わりに建物の維持管理を行って、大学生に活用してもらっています。「空き家を譲った後に、近所に迷惑がかからないか心配している人が多い」と代表理事の重森洋志さん。「『祖父母の代から顔なじみ』の信頼関係がある強みで、空き家の活用を円滑に進めていくことができています」と話します。
「滝川Y O R I A I」は、閉鎖寸前だった赤目四十八滝キャンプ場の運営を皮切りに、地域資源の掘り起こし、空き家や耕作放棄地の活用、集客イベントの開催など、地域課題解決に向けた取組を進めています。
若者が、地域づくり組織で重要な役割を担っています
「これまでにない新しい事業を進めていくためには、地域の理解が欠かせません」と重森さん。赤目まちづくり委員会は、これまで、区長経験者を法人に派遣し、地域住民とのつなぎ役とするなど、重森さんらの活動を支援してきました。赤目まちづくり委員会会長の藤村純子さんは、「地域の活動は、何をするにも若者を巻き込んでいきたいと考えています。地域の担い手が減っていく中、若者の感性を取り入れて、これまで『当たり前』だった行事を変えていく必要がある」と訴えます。現在は、「滝川Y O R I A I」をはじめ、青年会や消防団、P T Aなどに所属する若者自身が赤目まちづくり委員会の役員となり、地域の防災や青少年育成、賑わいづくりなどに積極的に関わっています。
大学生が地域の課題や魅力を探る「YORIAIプロジェクト」。現地案内や聞き取りなどに地域の皆さんが全面協力。大学生は空き家の多さに驚き、その活用も提案しました。
「子どもたちの居場所になれば」と、小学校近くの空き家をたこ焼き屋として活用しています。
地域で広場を整備。若者たちもイベントなどに積極的に活用し、地域を盛り上げています。
若者たちが参画する多世代で担うまちづくり~赤目まちづくり委員会の運営イメージ(令和4年度)~
※画像をクリックすると、PDFファイルが開きます。
地域の支えがあると、いろんなアイデアが形になっていく!
(一社)滝川YORIAI 重森 洋志 さん
空き家を学習教室やたこ焼き屋として活用していると、「この空き家も使ってくれへんか」という声をいただくように。空き家を維持管理するだけでなく、地域が賑わい、ビジネスにも結び付くような活用方法を所有者とともに考えます。こうした地域活性化に向けた取組を積み重ね、子どもたちにとって、将来の可能性を見出せる地域を築いていきたいですね。
でも、地域の中で「あいつら勝手なことやって」となれば、円滑に事が進まなくなってしまいます。地域一丸となって私たちの活動を応援いただいているからこそ、いろんな事業にチャレンジできる。また、若者同士の横の連携があることも大きな力となっています。
他地域の人に「若者の参画を進めるには?」と聞かれますが、平日昼間に会議が行われていたりすることも…。従来の慣習を一つひとつ見直していく必要があるのではないでしょうか。
PTA・学校・地域がスムーズに連携
元小学校PTA会長 冨森 康宏 さん
PTA会長、小学校長、区長などが「青少年育成部会」を構成しているので、何をするにも調整がしやすい!顔の見える関係だから「無理のない程度で」と気軽に助け合えるのもいいところですね。赤目地域では独自に、PTA役員経験者による「PTA運営評議会」を5年前に設立し、現役役員とともに活動しているので、地域との連携もうまく引き継いでいけるし、若者同士の新たなつながりも生まれていますよ。
「みんなで助かるまちづくり」を
消防団 赤目分団 濱地 俊宏 さん
子どもやお年寄り、車いすの人など、それぞれの視点で防災を考えておくことが大切です。地域ぐるみの防災訓練は重要な機会なので、消防団もしっかりサポートします。また、地域の催しに消防団が参加したり、消防団OBに支援いただいたりと、地域のつながりを大切にしながら、災害時に迅速な対応ができる体制を築いています。今後も、自助と共助で「みんなで助かるまちづくり」を進めていきます。
若者の声にしっかり耳を傾け、挑戦できる雰囲気をつくらないと
赤目まちづくり委員会 会長 藤村 純子 さん
まちづくりの担い手不足はじわじわとやってきます。高齢者などの生活支援組織「あんしんねっと赤目」でも、利用者が増える一方、ボランティア会員数は横ばいのままです。そうした中、赤目まちづくり委員会前会長の「若者や女性が積極的にまちづくりへ参画できる体制づくりを」といった考えを引き継ぎました。
コロナで中止になりましたが、夏祭りの運営を若い人たちに任せたところ、高校生がポスターを作ったり、子どもが盆踊りに参加できるようにしたりと新しい試みも企画されました。「今まではこうだったから」と頭ごなしに否定せずに、シニアの側から、しっかりと聞く耳を持つことが大切。若い人たちのチャレンジを温かい目で見守っていきたいですよね。
もちろん、従来の事業を180度変えてしまおうとしているのではありません。いろんな世代の人の発想を生かして、失敗も繰り返しながら、少しでもいい方向にまちづくりを継続していければと思うのです。
地域課題と市の取組(2)「担い手不足」
地域経営室 室長 中木屋 恵理子
高齢化が進む名張市では、これまで主に地域の活動を担ってきた60~70歳前後の「支える世代」が減少。75歳以上の「支えられる世代」が増えていき、地域の事業や役員選考のあり方など、従来通りではうまくいかない地域が出てくることも考えられます。
市では、地域間の情報共有を図ったり、市の現状や先進事例などを知ってもらうシンポジウムや研修などを開催したりしています。
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まちを未来へつなぐ
地域に愛着を持ち「将来はここに住みたい・戻りたい」と思える持続可能なまちを目指して、つつじが丘では、子どものうちからまちづくりに参加する機会を設けています。
子どもと大人が地域の課題を話し合う「つつじっ子会議」
「最近はあいさつをする子どもが多くなったね」。そう話すのは、つつじが丘・春日丘自治協議会会長の大内房雄さん。地域ぐるみのあいさつ運動は、平成29年に発足した「つつじっ子会議」という小中学生と大人たちが地域の課題を話し合う場から生まれました。「あいさつが飛び交うまちにしよう」と、子どもたちが地域を練り歩いたり、あいさつを呼びかけるティッシュを配ったり、まちじゅうに看板を立てたり…。大内さんは、「地域のためにと、子どもたちからいろいろ提案してくれます。できるだけ、一緒に実現させていきたいですよね」と嬉しそう。
あいさつ運動をはじめ、地元のイベント企画や、ご当地キャラ「えみらる」の制作、子どもたちの考えた標語入りの交通安全看板の設置など、話し合われた内容が一つずつ実現されています。そんな様子を見て、会議設立時に中学生2人だった参加者が、現在では約50人にまで増えています。
子どもたちが、まちに関わり 続けたいと思えるように
「空き店舗で地元の新鮮野菜を売り出してはどうか」。会議で、子どもたちからそんな提案が出されました。「空き店舗や空き家、空き地の活用など、実現にはハードルが高い課題もあります」と大内さん。つつじが丘では、独自に空き家や空き地の把握に努めていて、昨年は、近大高専の学生とともに空き家のアンケート調査を実施。子どもが進学や就職でつつじが丘を離れる家庭が多い中、空き家になった際の対応を決めていない人が多いことが分かりました。さらに、95%が「身内がUターン移住する予定がない」と回答。事態の深刻さが浮き彫りとなりました。
「子どものころからまちと関わりを持って、社会に出ても継続して関わり続ける。そんな流れが生まれてくればいいですよね。『つつじっ子会議』のメンバーと接していると、もうすでに『地域の一員』という気持ちをもってくれているように感じます」と大内さん。
市内の高校に通う生徒で「将来的に名張市に住みたい」とした人は41%(市外在住除く)。その3分の2が「地域との関わりがある」というデータもあります。「つつじっ子会議」の取組は、まちの未来を大きく変えていくきっかけになるかもしれません。
子どもたちが参画する「持続可能なまちづくり」~つつじが丘の事例をもとにシミュレーション~
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※つつじっ子会議の活動や近大高専の学生による研究をもとに作成しました
つつじが丘に住み続けたい!
つつじっ子会議メンバー(南中学校3年生)
平野 結士 さん
会議のメンバーで考えたご当地キャラ「えみらる」が、イベントや看板、お弁当など地域のいろんなところで活用されるようになってきて、うれしいし、なんだか達成感があります。
中学校を卒業すると、会議を抜けることになりますが、地域の大人とも顔なじみになれたので、今後も「子どもフェスタ」など地域の行事に関わっていきたいですね。つつじが丘は、人が温かくて、すごく居心地のいいところ。できれば、ずっと住み続けたいなって思っています。
つつじが丘が、めっちゃ好き!
つつじっ子会議メンバー(南中学校3年生)
森本 未來 さん
会議に参加するまでは、地域の人と接することもなかったけれど、今では、いろんな人に大きな声であいさつできるように。すると、笑顔でいろいろ話しかけてくれるようになって、それがなんだかうれしいなって思います。
それに、会議に出てる地域の皆さんをみていると「つつじが丘が好きなんやな」ってすごく伝わってくる。現在は、大好きなつつじが丘のことを多くの人に知ってもらえるようなクイズ企画を練っています。
子どもたちも地域の一員。一緒になってまちの未来を考えていきたいですね
つつじが丘・春日丘自治協議会 会長 大内 房雄 さん
この夏、自治協議会では、子どもたちの学習の場として集会所を開放。お茶やお菓子を用意したのに、ほとんど利用されなかったんです。なるほど、子どもたちに利用方法を考えてもらった方がよかったなと。子どもを地域の一員と捉え、一緒に考えることが大切だと改めて思い知らされましたね。
「つつじっ子会議」は、そんな子どもたちの声を聞ける大切な場。真剣に耳を傾け、どうすれば実現できるのか、また、実現が難しければ、なぜ難しいのかをきちんと伝えます。ある日、子どもたちが「溝にごみが詰まっているよ」と市民センターへ知らせてくれて、一緒に掃除したこともあります。地域の困りごとを自分事と捉えてくれたことがすごく嬉しかったですよね。
空き家の問題は、深刻に受け取っていて、定期的な調査を実施しているほか、近大高専の学生による調査結果を地域の広報紙でも連載。一人ひとりに危機感を持ってもらうことからはじめていこうと考えています。
これからも、子どもや女性、若者を巻き込みながら、空き家問題を含むさまざまな地域課題に取組み、子どもたちが大人になったとき、つつじが丘に住みたいな、戻りたいなと思えるような、賑わいあふれるまちであり続けたいと思います。
地域課題と市の取組(3)「空き家」
営繕住宅室 室長 浪花 武志
適正に管理されていない空き家は景観を損ねるだけでなく、害獣の生息や放火、不法投棄、建物部材の落下などの問題を引き起こします。
名張市の住宅総数の実に7分の1が空き家という状況の中、市では、「空き家バンク」による空き家売買のサポート(8月末現在の登録件数…251件、成約件数…176件)や、移住者向け中古住宅改修に対する補助、危険な空き家の除却補助などの取組を進めています。
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空き家対策は現状把握から
近畿大学工業高等専門学校
教授 立神 靖久 さん
空き家は個人の財産ですので、他人が勝手に手入れできません。だからと言って放置するのではなく、まずは、現状を把握し、地域内で共有することが大切です。そして、自分の家が空き家になった際の対応を考えておく意識を高めていくなど、地域ぐるみで取り組んでいく必要があります。
特にニュータウンの空き家は、都会の移住者が望む田舎ならではの景観や畑などの付加価値がある物件が少なく、根本的には人を流出させない取組が求められます。地域の協力を得て、つつじが丘の空き家の状況や互助の取組を調査・研究した本校の学生もまた、「子どものころからまちづくりに関わり、将来的にここで子育てをしたいと思える循環をつくること」の必要性を訴えています。
このまちと、これからも。~あなたにとって「賑わいあるまち」って、どんなまち?~
へっぽこラジオ体操
左から 中 基紀さん、山下 哲平さん、岩本 和磨さん
同級生の3人が、毎朝、朝日公園などでラジオ体操を始めた!
SNSで参加者を募る彼らは「思いきって行動に移せば、いろんな人とつながっていける」と意気込んでいます。8月の「24時間体操チャレンジ」には、のべ90人が参加。こうした一つひとつの取組がまちに活力をもたらしています。
名張の素敵発見
美山 莉香さん
▼デザイン会社経営。スキルを生かして名張の魅力をHPなどで発信中
都会にあこがれて、名張を出ていった時期もありましたが、帰郷して子どもが生まれたときに気付いたんです。安心・安全な野菜や食品が、名張だとこんなに手に入るんだって。これを広く伝えていこうと、地元農産物や農家さんの魅力を発信するウェブサイト「nanowa(なのわ)」の運営に携わり、もう5年が経ちます。
名張と言えばこれ」という特徴はないかもしれませんが、豊かな自然においしい食べ物、万葉の歴史…、実はたくさんの魅力があって、新しい発見を楽しめるまち。今では、女性の在宅ワーク支援の一環で、2人のママさんと一緒にイベントやグルメ、お出かけスポットなど幅広い情報を「nanowa」を通じて発信しています。
市内外の人に名張の「素敵」をたくさんみつけてもらって、名張っておもしろそう、住んでみたい、住んでよかったという人が増えていくといいなと思います。
文化祭×学園祭×音食祭
佐山 天晟(たかせ)さん、小澤 寧々さん
▼伊賀地域の学生手作りのイベントを発案・実行した高校生
学校行事がコロナで次々と中止に…。自分たちの青春は自分たちで作ればいい。そんな思いで、昨年の秋ごろからLINEを使って仲間を募っているうちに、友達が友達を呼び、中学生から大学生までなんと50人の実行委員が集まりました。
音楽やダンス、食などが一緒に楽しめるイベントを目指し、仲間たちと試行錯誤。地元の企業にも出店や協賛をしてもらいながら、ひとつずつ自分たちの思いを形にしていきました。こうした中、仲間同士の絆も深まりましたね。
7月に開催のイベントには子どもからお年寄りまで約3,000人の来場者が。オリジナルのテーマソングを披露した後、大空へ放った風船を見上げて歓声を上げるみんなの姿を見ていると、自然と涙が溢れてきました。来年は伊賀市で開催予定。今からもう準備に入っています。さらにレベルアップして地域を盛り上げますよ。
- ミクコレチャレンジ(インスタグラム)
離れても百合が丘の一員
八木 知夏 さん
▼信州大学2年生。育った地域を大切にしたいと、帰省した際などに地域の活動に参加している
忘れられない「百合小子どもクラブ」主催のキャンプ。クラブに関わる地域の大人たちが全力で遊んでくれました。こうした活動を通じて、まちじゅうに知っている大人がいたことは、このまちに住む安心感につながっていたんだと思います。
小学校卒業後も子どもクラブに関わりたくて、地域の皆さんと一緒に活動をサポートする側に。今では30人を超えるクラブ出身者がこの輪に加わっています。地域のいろんな人と関わることで新しい自分が見つけられる。子どもたちにも、そう感じてもらえたらなと思います。
今は百合が丘を離れて暮らしていますが、地域の一員として、私の居場所があると感じます。イベント企画にもオンラインで参加できますし。人と人との関わりの中でこそ、まちの賑わいが生まれていくのではないでしょうか。これからも百合が丘の活動に積極的に関わっていきます。
商店街に灯をともす
細川 智之 さん
▼空き店舗で地元産野菜などを販売する「おひさま市場」を開催
かつての桔梗が丘商店街は、人や車が通れないほどの賑わいで、店主とお客さんの交流も盛んでした。地域の人のつながりの中心が商店街だったように思います。今は閉まったままのシャッターが目立ち、行き交う人もまばら。このままではアカン…。そんな気持ちがこみ上げますね。
移動手段がなくて買い物に困っている人のために始めたのが「おひさま市場」です。週に2日、空き店舗で開催。荷物を持ってあげたりしながら、お客さんとコミュニケーションも。「市場ができてよかった」と言ってもらえると励みになります。
月に1度は、他地域のカフェなどにも出店してもらう「マルシェ」を開催。若い人の姿も多く、普段から市場を利用いただいている人も家族を連れて来てくれたりと、皆さんに応援いただいています。商店街に少しずつでも活気を取り戻せるよう、地道に取組を続けていきたいですね。
巻き起こる移住者旋風
上高原 由佳 さん
▼2年前に名張へ移住。人のつながりを大切に、農業に親しんでいる
無農薬米を作る92歳の大ベテランに農業を教わろうと、大阪から名張へ移住。農業が軌道に乗ってくる中、今年からは、親子連れなどを対象に田植えや稲刈り体験を始めました。農業のやりがいや食の大切さを感じてもらえたと思います。
余ったトマトの苗をみんなに育ててもらう「トマトチャレンジ」という企画も実施。SNSで募集すると、県内外から25人が参加してくれました。育て方を伝えているうちに会話も弾んで、私自身が一番楽しんでいたかもしれませんね。
全国の人に自慢したくなるおいしいお米に野菜、そして、人の温かさ!もう、このまちにぞっこんです。「自分がいいな」って思ったことを、みんなと共有できれば、新しい輪が広がっていくんですよね。そんな人が少しずつでも増えていけば、まちはもっと賑やかで、楽しくなっていくんじゃないかな。
「シティプロモーション」で、地域の持続的な発展を
東海大学 文化社会学部 教授 河井 孝仁 さん
▼地域の持続的発展に向けたシティプロモーション推進を図る「シティプロモーションアワード」を創設するなど、全国的なシティプロモーション研究の第一人者として精力的に活動されています。
近年「シティプロモーション」という言葉を耳にするかと思いますが、その目的は、地域の魅力を発信し、人口増加を目指すことに留まりません。まちに愛着をもって、自分の住む地域を良くしたいと考える人や、住んでいなくても、その地域に関わろうとする人など、「地域に真剣になる力」を地域の内外に広げ、「地域の持続的な発展」につなげていこうというものです。
ところで、「まちへの愛着」はどこからやってくると思いますか。全国の事例からみて明らかなことは、自分のまちを語れる″ようになれば、確実に愛着が生まれるということです。「自分のまちには何もない」と日本中どこに行っても聞きますが、まずは、まちの魅力を語れる人を増やしていくこと。その上で、魅力を発信できる場をたくさんつくっていって、住民自らが共感できる名張「らしさ」を示すブランドメッセージが生まれてくれば、さらに「シティプロモーション」の活動が広がっていくことでしょう。
こうして地域に関わる人々の持続的な「ここに住む(関わる)幸せ」をつくり出す循環ができれば、まちの輝きは失われないはずです。
人と人とのつながりを大切に、「賑わいあふれるまち」へ
名張市長 北川 裕之
▼名張市の活力を失わせないよう、「新しい産業が息吹くまち」「若者が定着するまち」「だれもが安心して暮らせるまち」を政策の柱に掲げ、今年4月、第4代名張市長として初当選。現在、まちづくりの基本指針「名張市総合計画」の策定に向けて取り組んでいます。
通勤・通学に不便。働く場所がない。こうした理由で多くの若者が名張市から転出している中、大阪・関西万博をきっかけに、食と観光を基軸とした新たな観光産業を築き、魅力的な働く場を創出していきます。
また、新しい総合計画の策定にあたり、若い人たちと意見交換していると「まちづくりに関わるチャンスがない」といった声も。意欲ある学生や若者がチャレンジできる機会が必要で、例えば、県内の大学生が地域課題の解決に向けて取り組む「三重創生ファンタジスタ」といった制度の活用なども検討しています。
「まちの賑わい」は、商業・観光施設の誘致や一過性のイベントなど、単に人を集めるだけで形成されるものではないはずです。まちに愛着をもった人がつながり、コミュニケーションが活発に行われ、まちの将来に主体的に関わる人を増やしていくことこそが重要なのではないでしょうか。
人と人とのつながりが名張の財産です。今後、皆さんと一緒になって「シティプロモーション」を強化し、転出した人も含め、市内外に地域の協力者を増やしながら、賑わいあふれるまちを目指していきます。
みんなで名張の魅力を発信! #名張感動投稿キャンペーン
今年で3年目!四季折々の絶景や家族でのわくわく体験など、名張で撮影した魅力ある作品を「#(ハッシュタグ)名張感動」を付けて、SNSで投稿・拡散してください。投稿いただいた作品は、市の「シティプロモーション」に活用させていただくことも。「#名張感動」を合言葉に、地元の魅力を周りに伝えて、みんなで名張を盛り上げていきましょう!
「広報なばり」令和4年10月号を再編集して掲載しました(配布の紙面はモノクロです)
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