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名張市

江戸川乱歩

更新日:2015年3月19日

  • 江戸川乱歩 平井隆太郎氏提供の画像

    江戸川乱歩
    平井隆太郎氏提供

日本の探偵小説を創始した作家、江戸川乱歩は、明治27年(1894)、名張の町に誕生しました。生後まもなく転居したせいで、乱歩にとって名張は「見知らぬふるさと」でありつづけましたが、晩年になってようやく「ふるさと発見」が果たされ、昭和30年(1955)には名張市民の手で「江戸川乱歩生誕地」碑が建立されました。碑には、乱歩の略伝と代表作がこんなふうに記されています。

江戸川乱歩(本名平井太郎)は 明治二十七年十月二十一日 当時 名賀郡役所の書記であった平井繁男の長男としてこの地に生れた 大正五年早稲田大学を卒業 同十二年処女作「二銭銅貨」を発表 爾来多くの傑作を著わして日本近代探偵小説を創始しその分野を確立した

代表作

  • 心理試験 
  • 人間椅子 
  • パノラマ島奇談 
  • 陰獣
  • 石榴 
  • 孤島の鬼 
  • 黄金仮面

日本に探偵小説という新しいジャンルを切り開き、大衆文学の世界や少年小説の分野でも熱狂的な人気を集めた江戸川乱歩の作品は、いまも多くの読者に読み継がれています。

乱歩と名張「ふるさとの発見」

    江戸川乱歩の本名は平井太郎といいます。平井家は武士の家柄で、祖先は伊豆伊東(静岡県)の郷士でした。のちに津(三重県)の藤堂家に仕え、乱歩の祖父の代まで藤堂家の藩士として勤めつづけました。

    乱歩の父・繁男も津に生まれ、大阪の関西大学で法律を学びました。卒業後も大阪で学業に励んでいましたが、津に一人で暮らす母親をほうっておけず、明治26年(1893)、名張町にあった名張郡役所(のちに名賀郡役所)の書記に就職、名張の新町に家を借り、母親を呼び寄せて同居しました。同じ年、津から妻を迎え、翌27年10月21日には長男が誕生しました。これが江戸川乱歩です。

    明治28年6月、繁男は同じ三重県の鈴鹿郡役所に転勤となり、一家は亀山に引っ越します。乱歩が名張で過ごしたのは生後7、8か月のごく短い期間で、その後も訪れる機会はありませんでした。乱歩は生まれ故郷がどんなところかを知らないまま成長し、やがて探偵作家としてデビューします。

    乱歩は自分が名張生まれだということは知っていましたから、昭和10年(1935)前後、旅行の途中に名張駅で降りてみたこともあるそうですが、知り合いもなく、ただ名張の町を歩き回るだけに終わりました。本格的な帰郷が果たされたのは昭和27年(1952)9月のことです。乱歩は57歳で、探偵文壇の大御所になっていました。

    名張を訪れた目的は選挙の応援でした。乱歩は大学在学中から作家としてデビューするまで、三重県上野出身の代議士・川崎克の世話になり、彼を終生恩人として仰いでいましたが、その二男が衆議院議員選挙に出馬したため、応援演説を引き受けて名張に赴いたのでした。名張の町で乱歩は熱烈な歓迎を受け、生家の跡にも案内されました。このときの様子は、翌28年に発表された随筆「ふるさと発見記」にくわしく記されています。

    乱歩と名張「生誕地碑の建立」

    • 乱歩生誕地碑広場の画像

      乱歩生誕地碑広場

    昭和27年の帰郷がきっかけになって、名張では江戸川乱歩生誕地碑の建立が企画されました。有志が浄財を募り、乱歩と相談しながら準備を進めました。かつて乱歩の生家があったところに、高さ約1.9メートルの石碑が建てられ、「江戸川乱歩生誕地」という文字のほかに、乱歩の書いた「幻影城」「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」という言葉が刻まれました。

    除幕式は昭和30年(1955)11月3日、乱歩夫妻の臨席のもと、盛大に催されました。乱歩は講演会や座談会も行い、香落渓などの観光名所にも足を運んで、名張をあとにしました。翌年発表された随筆「生誕碑除幕式」は、こんな文章で結ばれています。

    「たとえ生誕碑にもせよ、自分の碑の除幕式に列するなんて、あまり例のないことだろうと思うが、名張市というところが、従来中央で多少名を知られたような人を、一人も出していないために、私のようなものでも、珍らしがって取り上げてくれたのだろうと思う。市の企画とか、個人の金持の企画とかいうのでなく、町の人々が、自発的に六十年もごぶさたしていた私に対して、こういう好意を見せて下さったのは、実にありがたいことだと思っている」

    名張市立図書館 乱歩コーナー

    • 図書館の江戸川乱歩コーナーの画像

      図書館の江戸川乱歩コーナー

    名張市立図書館は昭和44年(1969)7月に開館しました。開館準備の段階から江戸川乱歩の著作や関連文献の収集に努め、現在に至っています。昭和62年(1987)には現在地に移転し、館内に江戸川乱歩コーナーを開設、乱歩の著書や色紙、原稿などのほか、次のような遺品を展示しています。(すべて平井隆太郎氏より借用)

    • 座卓 1 
    • 火鉢 1  
    • 屑入れ 1  
    • 帽子 3  
    • 麻上下洋服 1  
    • オーバーコート 1
    • ステッキ 1  
    • 硯箱 1  
    • 硯 1  
    • 墨 1
    • 筆 4  
    • 電気スタンド 1  

    以上。

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    教育委員会事務局 文化生涯学習室
    電話番号:0595-63-7892
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